PepMetics®技術は
低分子による自在なペプチド模倣技術

Molecules act like peptides.
PepMetics®化合物は、ペプチドと同様の機能をもちつつ、低分子のように自由に合成できます。

自然界では、多くのタンパク質-タンパク質相互作用(PPI)に対して、中分子であるペプチドが選択性と親和性を持つことが示されており、これまでにペプチドを用いた医薬品が開発されてきました。一方で、多彩な化学合成技術を用いて合成できる低分子を用いてこれまで多くの新薬が創出されていますが、PPI を制御する医薬品を開発することは困難でした。

当社が開発した PepMetics® 技術は、タンパク質の特徴的な構造として知られるα-ヘリックスや β-ターンなどの二次構造を模倣するペプチド模倣技術です。PepMetics®技術は、天然または非天然のアミノ酸の置換基を柔軟に付加した低分子を自在に化学合成できるため、自然界と化学技術の両方の利点を併せもつ画期的な創薬基盤です。これにより、細胞内および細胞外のPPIを制御することができます。

タンパク質中の二次構造を立体的に模倣

PepMetics®化合物は、自然界に存在する α-ヘリックスや β-ターンの形状を取り、
安定したコンフォメーションを維持します。

PepMetics®化合物は、複数の飽和環状構造を有する立体的で安定的な配座を維持できる堅牢な骨格構造に複数の側鎖がついた化合物です。骨格は 40 種類以上が合成可能で、側鎖は自在に合成展開できます。骨格に含まれる複数の不斉炭素原子の立体化学を制御することで、3 次元的に側鎖の位置や方向を配置し、多様な構造的特徴を持たせることが可能です。

PepMetics®化合物の概要

PepMetics®化合物の概要

一般的に、ペプチドは短いα-ヘリックスおよび β-ターンの二次構造を保てません。しかしPepMetics®化合物は、独自の技術によって短い α-ヘリックスおよび β-ターンを安定的に維持できます。PepMetics®化合物は、立体構造の安定化によってエントロピー損失を減少させ、結合親和性を大幅に改善できるポテンシャルを有しています。

自然界では、α-ヘリックスの中でも曲がったり伸びたり捻じれたりしたさまざまな形状を取っているものがあります。自然界のさまざまなペプチドリガンド構造を模倣するには、それぞれ適した骨格を利用することが重要です。
当社は、対象とするペプチドの骨格と模倣化合物の骨格の類似度を評価するために、2種類の分析を用いた独自の方法を開発ました。

(参考論文)ACS Omega, 2021, 6, 26601.

アミノ酸配列情報をもとにした創薬へ応用した例

PepMetics®技術を用いることで、立体構造が明らかになっていない
生理活性ペプチドであっても、そのペプチドを模倣した低分子化合物の合成が可能です。

特定のタンパク質を認識して結合するペプチド(ペプチドバインダー)は多数知られています。しかし、タンパク質との結合構造の解明を通した構造に基づく創薬を進めることは困難です。

PepMetics®技術では、ペプチドバインダーのアミノ酸配列と二次構造の情報を用いて模倣低分子化合物を設計できます。以下は環状ペプチドを PepMetics®化合物に置き換える手法です。環状ペプチドの結合部位は α-ヘリックスや β-ターンに類似した構造を取ることが多いため、連続した 3~4 個のアミノ酸の模倣によって分子設計をしています。

  • 3~4 個の連続したアミノ酸を 1 つずつずらして、環状ペプチドの配列の一部を模倣した PepMetics®化合物を合成します。
  • PepMetics®化合物の活性を評価し、ヒット化合物を取得します。
  • ヒット化合物の結合様式を、コンピューターを用いた分子解析(in silico)のドッキングシミュレーションで予測し、構造活性相関(SAR)を確認します。
  • In silico で予測された結合様式から結合に重要な特徴を抽出します(ファーマコフォア)。
  • ファーマコフォアに基づいて、バーチャルスクリーニングを行い、有望な化合物を選択して合成します。

このような流れで配列情報によるペプチド模倣でヒット化合物の創出から有望な化合物の合成展開を一貫して進めています。

アミノ酸配列情報をもとにした創薬へ応用した例_(参考論文)Pharmaceuticals, 2022, 1506.

(参考論文)Pharmaceuticals, 2022, 1506.

天然変性タンパク質を標的とした創薬へ応用した例

独自に開発した手法を用いて、天然変性タンパク質を標的とした
PepMetics®ヒット化合物を取得することができます。

天然変性タンパク質(Intrinsically Disordered Protein, IDP)は、生理条件下で特定の折りたたみ構造を持たないタンパク質です。IDP はタンパク質同士のシグナル伝達や転写制御などで重要な役割を担っているにもかかわらず、結晶構造の入手が困難なため、ほとんどの標的で結合位置は解明されていません。そのため、創薬では困難な標的として知られています。

一方で、多くの IDP の相互作用においては、短いα-ヘリックスが形成されることが知られています。PepMetics®化合物は、短いα-ヘリックスを模倣する特徴があるため、IDP 創薬のシードとして理想的な性質を有しています。
当社では、株式会社理論創薬研究所と共同で、IDP の結合配列を予測する独自のアルゴリズムを開発しました。この解析技術を用いることで、IDP に関わる未知の結合部位に対する PepMetics®化合物の探索が可能になります。IDP を標的とする創薬には困難を伴いますが、当社では PepMetics®技術を生かして取り組みを継続しています。

天然変性タンパク質を標的とした創薬へ応用した例